2009年 06月 08日
「一番好きなアーチストは誰ですか?」と聞かれることがあれば、僕は悩むことなくJeff Hansonというアメリカのシンガーソングライターの名前を挙げていました。 実際は小太りのお兄ちゃんなのに、女性のような声で繊細な曲を紡ぐ、出来そうで出来ない、いそうでいない無二のアーチストで、特に1stの「Son」は何回聴いたか分からないぐらい僕の人生にとっては重要なアルバムです。 そのJeff Hansonが、数日前に亡くなったことをついさっき知りました。 いやー。なにこれ。すげえショックなんですけど…。 誤報じゃねえの?とあれこれ調べてみたのですが、どうも複数のソースに掲載されているので事実らしく、海外のサイトに投稿されているファンのコメントを呆然と眺めていました。いやー…。きついな、これ。まだ31歳って。3枚しかアルバムだしてねえのに。 さっきも書いた1stの「Son」は、東京の制作会社で働いていた個人的にとても辛い時期に聴いていたアルバムで、ごくパーソナルな価値になってしまうけれど、僕にとっては曲がいいとか歌がいいとか、他人と共有できる物差しを超越して時間とため息と思い出が詰まった人生のサウンドトラックな一枚で、この先どれだけの新しい音源を聴いたとしても「Son」を超える思い入れを抱くことはないだろう、という確信があるぐらい特別なものなんです。 結果的に最初で最後となってしまった来日公演にも北海道から行ったんですけど、ライブの最後に前座についたバンドがバックについて、フルバンド形態で3曲だけだけど演奏したのが、もうすげー良くって。30歳のいいおっさんが、下唇がぷるぷるさせて必死に号泣するのを堪えるという。音楽に接して「感極まる」としか表現しえない瞬間を体験するのも、きっとあの日が最初で最後になるような気がします。 だいぶ遅れたけど3rdアルバムも日本盤が出たので「ひょっとしたら来日するかも」とか淡い期待を抱いていたのに、まさかこんな訃報を聞くことになるなんて。 もっともっと、彼の歌が聴きたかった。 #
by zakiryo
| 2009-06-08 01:23
| EMO
2009年 06月 02日
Angel Witchが30年の時を経て初来日公演決定!なんだそうです。確かに1stは名盤ですけども、2009年も半ばを迎える今日において、QUATTROが埋まる程のお客さんは集まるのでしょうか…。 NWOBHMファンの皆様、大変です! とか言われても、今の日本にNWOBHMファンて何人おんねん、と言いたくなりますね…。(そういう意味で注目のライブではありますが) と、いきなり横道に逸れましたが、今回は30年と言わないまでも15年ちょい昔に戻りまして、僕が初めて聴いたメタル・アルバムSkid Rowの「Slave to the Grind」をピックアップしたいと思います。 ■ Skid Row / Slave to the Grind 今改めて調べたら、このアルバムって91年発表なんですね。もう18年かい…。 発表当時は、確かアメリカのチャートで初登場1位を獲得したはずで、「そんな時代もあったんだなあ…」と懐かしむ反面、音を聴けばそのカッコ良さは今でも十分通用する内容。 80年代のヘア・メタルほどのナヨナヨ感はなく、とはいえVoのSebastian Bachのルックスで女性ファンにもアピールと、よくよく考えると間口の広い層に受け入れられる要素をもったバンドだった気もします。 そのSebastian Bachをボーカルに擁した全盛期は、「Slave to the Grind」を含めてもたった3枚しか作品を出しておらず、それもまた勿体なかったなあと思いますね。次作「Subhuman Race」に、全盛期のこのバンドにしか作り得ないコテコテのパワーバラードが1曲でもあったなら…というのは、今でも本気で思います。 今回、動画は「Slave to the Grind」の1曲目かつ1stシングルの「Monkey Business」をどうぞ。 こういう曲こそ、最近の高校生とかに聴いて頂きたい!(と、おっさんは思う) 因みに、このSkid Rowには「18 and Life」っていう曲がありまして、18歳の少年が誤って銃で人を殺してしまい、「18にして人生を知る」というような内容なんですが、これを16歳の時に聴いて「僕も18になったら何かを知るのだろうか」とぼんやり思ったものの、33歳の今も人生なんてさっぱり分かりません。 #
by zakiryo
| 2009-06-02 23:18
| HM / HR
2009年 05月 24日
札幌では今、ライラックが満開です。 北海道では比較的あちこちで目にすることのできるライラックですが、なにぶん30代音楽オタクなので、花としての存在よりもまずThe Blankey Jet Cityを連想してしまう悲しい性。 ということで、今回はThe Blankey Jet Cityをピックアップしたいと思います。 ■ The Blankey Jet City / Red Guitar and the Truth イカ天出身のバンドとしては孤高というか特異というか、どこまでの男臭いニヒリスティックなロッカビリーバンドで、本人の楽曲にも出てくる「不良少年の歌」っていう表現が本当に似合う、良いバンドでした。 良くも悪くも世間のマジョリティとは異なる価値観を貫き通したからこそ、このバンドは成功したんだと思います。(もしクラスメイトにいたとしたら絶対仲良くはならないタイプだけど) 個人的にそのイカ天期から3枚目ぐらいまでをめっちゃ聴いていたので、どうしても初期の楽曲に思い入れがあるのですが、「Cat was dead」とか「僕の心を取り戻すために」とか「ヘッドライトのわくのとれかたがいかしてる車」とか、全キャリアを見渡しても初期の楽曲にこそ、彼らが貫いた価値観が色濃く出ているような気がします。 うわー。これ高校時代めっちゃ思い出す…。けど、やっぱカッコいい。 バンドは2000年に解散し、Vo&Guの浅井健一はその後何名義で何枚のアルバムを出しているのか最早誰も分からないような状況ですが(いくらなんでも出し過ぎ)、Blankeyを聴くと、時に自分の価値観を貫くことの大事さを思います。 #
by zakiryo
| 2009-05-24 06:07
| Alternative
2009年 05月 18日
人であれば誰しも「何をやっても上手くいかない」時期というのがあるかと思います。で、そんな辛い時期をどうやって乗り越えるのかは、人生をやりくりしていく上で最も重要なことかもしれません。 旅に出たり、友人や恋人と過ごしたり、買い物に行ったり。人によって、その乗り越える・やり過ごすための方法は違うと思うのですが、僕の場合は、こんな音楽をお供に内省の旅路を行きます。 ■ ISIS / Oceanic ISISは、アメリカ出身のポストロック~スラッジバンドで、今回ピックアップするOceanicは2002年発表の2ndです。 前回のtoeと同じ、基本的には歌を伴わないポストロックスタイルとは言え、ベースにあるのはメタル~ハードコアのへヴィネスだし、これといってキャッチーなメロディがあるわけでもないので、ポストロックのなかでもより敷居の高い音だと思います。 僕にとっても気軽に毎日聴くようなアルバムではないのですが、ただ、冒頭に書いたような辛い時期に聴くと、この音が物凄く嵌る。 楽曲やメロディのポピュラリティって、いわば他人との共感や繋がりを求めるがこその要素だと思うのですが、ISISの場合、その他人との共感を徹底的に排除して、ひたすら自己との対峙に没入するような音なんですよね。 他人からどんな批判を浴びようと、どんなに結果が出ないとしても、自分で自分自身の行為を肯定できるのであれば、いかに辛い状況であろうと自分を支えていけると僕は思っています。 つまり、辛い状況だからこそ、内を省みて、自己の批判に耐えうる行為を積み重ねなければいけないのだと。 ISISのアルバムを聴いて、ISISと聴き手の間に共感や繋がりは生まれないと思います。ベン図で表せば、2つの円が重なる領域は生まれないといいますか。 ただ、共感はなくとも、苦境に佇むそれぞれの円に内なる強さを与えてくれる、海原に射す光芒のような稀有なアルバム。名盤です。 #
by zakiryo
| 2009-05-18 01:25
| Post Rock
2009年 05月 13日
「人は、内なる微弱な電流を強めなくてはならない」 かなり昔なのですが、司馬遼太郎がテレビでそんな感じのことを言っていました。 「さすが作家は上手い表現するなあ」と今でも印象に残る言葉なのですが、その「微弱な電流」を音楽で表現するのが、日本が世界に誇るインストゥルメンタル/ポストロックバンド、toeです。 ■ toe / the book about my idle plot on a vague anxiety 以前Mogwaiのエントリーで取り上げたポストロックですが、さらに細かく見ればそのMogwaiに代表される轟音系であったり、TristezaやThe Album Leafのようなアンビエント系であったり、te'のようなパンキッシュな路線であったり、実に様々なアプローチが見られます。 そんななか今回取り上げるtoeは、そのいずれにも当てはまらない繊細でストイックな音像です。 轟音炸裂!ドカーン!みたいなのって、恐らく作り手からすれば楽な面もあると思うんですよね。それで楽曲としての起伏や山場は作れる訳だし。「う~ん。困ったから取りあえずここで轟音」っていうような。 対してtoeは、繊細で流麗な音のレイヤーを丁寧に丁寧に重ねて曲を作り上げています。地味な方法論だけに、それは即ち制約条件でもあるだろうし、このスタイルで曲を作るのってすげえ大変なんじゃないかと思います。既知感というか、以前に似た感じになってしまうことも多いだろうし。(そしてそれをバンド自身が良しとしないから、なかなか作品が発表されないんだと思う) 音圧はこんなにも低いのに、鳴る音はどこまでもストイック。 今回動画を張った「Tremolo+delay」のみならず、the book~に収録されている楽曲はどれも同じように地味な手法で、とても印象的なフレーズを作り出す素晴らしい出来栄えです。 司馬遼太郎が「強めよ」と諭した微弱な電流。 toeは、その電流と正対するからこそ作れるものがあるんだ、という証明だと僕は思っています。 #
by zakiryo
| 2009-05-13 04:57
| Post Rock
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